
近未来の医療研究にどっぷり浸かる!
科学の世界を舞台とした高難易度マーダーミステリー!!
今回は、パッケージ型マーダーミステリー『ゲノムの塔』をレビューします!
本シナリオのあらすじ・遊び方、登場キャラクター、ネタバレなしの感想・評価についてご紹介します。本記事がこれからプレイ予定のあなたの参考になれば幸いです!
シナリオ概要
| プレイ人数 | 7人(GM不要) |
| プレイ時間 | 180分 |
| 対象年齢 | 15歳~ |
| ジャンル | マーダーミステリー |
| 発売時期 | 2023/8/11 |
| デザイナー | しゃみずい |
| サイズ | 27 x 19 x 3 cm |
| 版元 | グループSNE/cosaic |
『ゲノムの塔』は、グループSNE×cosaicのMYSTERY PARTY IN THE BOX SERIESのシナリオのひとつで、最先端の研究がもたらす残酷な真実に迫る物語です。
各キャラクターに設けられた”医学リテラシー”による調査粒度の違いや、科学研究の世界にどっぷり浸かるため高難易度を誇る他に類を見ないシナリオです。
オフライン環境でのプレイ・GMなしでプレイすることができます。
あらすじ

西暦2045年――人類の夢、そして事件の始まり。
宇宙と地上をつなぐ「軌道エレベーター」がついに完成。
世界中の叡智が集まる新都市において、先端生命工学センター〈ゲノムの塔〉もまた、最先端の研究成果を生み出していた。
その塔で、すべてのウイルスに有効な“万能新薬”の完成が目前に迫る中、研究の第一人者・マユズミ博士が式典当日の朝、忽然と姿を消す。
残されたのは、博士が前夜に送った不可解なメールと、関係者たちの動揺。博士の失踪は偶然か、それとも計画された何かか?
浮かび上がるのは、人類の叡智が集結した“塔”に潜む、ある真実――。
登場人物紹介
マユズミ博士失踪時、塔に集まっていた7人の男女をご紹介しましょう。
※各キャラクターのパラメータについては、後述の”遊び方/ルール”にてご説明します。
大器晩成の美女:クイーン(28歳/女性)

- 医学リテラシー:1
- 第一調査トークン:3
- 第二調査トークン:4
- 若くして大手製薬会社の役員となった女傑
- 目つきのキツイ美女
- 創業者一族に連なる者で資産家
- なんとしても自社から博士が開発した新薬を世に出したい
- 生まれつきの強者で弱者の気持ちがわからない
段取八割のサラリーマン:セールス(42歳/男性)

- 医学リテラシー:1
- 第一調査トークン:3
- 第二調査トークン:4
- 大手製薬会社のくたびれた営業マン
- 研究室に日参してご機嫌伺いするのが役目
- 博士が開発する新薬の製造権獲得に進退をかけている
- 会社への忠誠心を胸に抱きつつも安らぎを欲している
猪突猛進の経営者:ベンチャー(32歳/男性)

- 医学リテラシー:1
- 第一調査トークン:4
- 第二調査トークン:3
- 新進気鋭の新興製薬会社社長
- 大手製薬会社には資本も信用も敵わないがやる気は十分
- その場しのぎの自転車操業
- マユズミ博士とは大学時代の同期
平々凡々の研究員:アシ(24歳/男性)

- 医学リテラシー:2
- 第一調査トークン:3
- 第二調査トークン:3
- 新米研究員
- 気の回る助手でいつも忙しなく動き回っている
- ナノの研究室にいたがマユズミ博士に憧れて移籍
- 小器用だが学問の深淵に覗き込むには覚悟も才能も足りていない
泰然自若のセンター長:ドク(62歳/男性)

- 医学リテラシー:2
- 第一調査トークン:3
- 第二調査トークン:3
- 先端生命工学センター所長
- ワクチン研究の世界的権威でもある
- 現在は研究の現場からは離れ後進の育成に力を注ぐ
- マユズミ博士の大学時代の恩師
沈思黙考の教授:ナノ(34歳/女性)

- 医学リテラシー:3
- 第一調査トークン:2
- 第二調査トークン:3
- 教授としてマユズミ博士と肩を並べる
- 背が小さくて学生に間違われることもしばしば
- マユズミ博士が頭角を現すまで天才ともてはやされていた
- 専攻はナノマシン開発
天真爛漫の少女:キャリア(17歳/女性)

- 医学リテラシー:0
- 第一調査トークン:4
- 第二調査トークン:4
- 新薬の地権者になるはずだった女の子
- ウイルス性の難病による附属病院に転院してきた
- 神話や幻想文学が好き
- 幼い頃からベッドに独りきりの環境が妄想力を育てた
遊び方/ルール
- イントロダクション読み上げ
- 担当キャラクターの決定
- 設定書読み込み(20分)
- オープニングフェイズ(自己紹介)
- 第一安全確認フェイズ
- 第一調査フェイズ(30分)
- 第一情報共有フェイズ(10分)
- 第一推理フェイズ(10分)
- 第二安全確認フェイズ
- 第二調査フェイズ(30分)
- 第二情報共有フェイズ(10分)
- 第二推理フェイズ(10分)
- 推理披露フェイズ(ひとり1分)
- 投票フェイズ
- クライマックスフェイズ
- エンディングフェイズ
本シナリオ最大の特徴は、MYSTERY PARTY IN THE BOX SERIESでお馴染みの”アクションフェイズ”がないことです。
アクションフェイズは、エンディング直前にキャラクターが個々でもつ特別な”アクション”を起こすことができるフェイズです。
たとえば、指定した他のキャラクターに危害を加えたり、所持品を奪ったり、告発したり、、、各自の設定書に記載されている固有のアクションを実行する物語を大きく盛り上げるフェイズになります。
そのフェイズの代わりに、本シナリオでは”クライマックスフェイズ”が設けられています。ざっくりいうと、キャラクター同士でのさまざまな話し合いと決断を行うフェイズです。
それでは、各フェイズについて詳細をご説明していきましょう。
イントロダクション読み上げ
ルールブックを基にテーブルにマップシートやカード、各種資料を展開した後、進行役プレイヤーを決め、ルールブック記載のイントロダクションを読み上げます。
イントロダクションとは、作品世界や登場人物の背景について記載された、物語の前提となる知識を伝えるためのテキストです。
ゲーム開始前に必ず進行役1人が読み上げて、プレイヤー全員に周知しましょう。

担当キャラクターの決定
各キャラクター設定書の表紙に、公開情報が記載されています。
この情報を参考に演じてみたい、演じやすそうといった基準で担当キャラクターを決定しましょう。
同じキャラクターを複数のプレイヤーで演じることはできません。選択が重複した場合はじゃんけんや話し合いで決定しましょう。
各キャラクターには以下のパラメーターを持っています。
- 医学リテラシー
- 第一調査トークン
- 第二調査トークン
医学リテラシーは、キャラクターがどれだけ医学的知識に明るいかを示しています。
科学・理系にアレルギーがある人は医学リテラシーの数値が小さいキャラクターを選ぶとプレイしやすいかと思います。
第一・第二調査トークンは、各調査フェイズにおける所有トークン数(調査可能な回数)を表しています。
医学リテラシーが低いキャラクターはトークン数が多めに調整されています。

設定書読み込み(20分)
選択したキャラクターの設定書を受け取り、各自自分の設定書を確認して自身の背景、目標、秘密などをチェックします。
自分の設定書を他のプレイヤーに見せないよう気を付けましょう。
20分経過しても設定書の読み込みが終わっていないプレイヤーが居る場合、適宜時間を延長するなど調整してもOKです。
オープニングフェイズ(自己紹介)
現在の状況と物語内における表向きの共通目標、各キャラクターの公開情報を確認するフェイズです。
現時点の状況(ルールブックのテキスト)を進行役プレイヤーが読み上げ、設定書の公開情報を基に全員で自己紹介を行います。
各キャラクター設定書の表紙にあるセリフ、その他公開情報を”発言順”の小さいプレイヤーから順に読み上げていきます。
キャラクターになりきって自分がどういう人間なのか、他のプレイヤーに説明しましょう。
第一安全確認フェイズ
進行役プレイヤーがルールブックのテキストを読み上げた後、フロアマップを確認するフェイズです。
ルールブックに指定された部屋について、それぞれのカードの山札における一番上の★印カードを全体公開します。★印の調査カードの所有権は誰のものでもありません。
物語の描写としては、部屋に入り調査ができる状態であるか、安全かどうかを目視確認するフェイズになります。

第一調査フェイズ(30分)
プレイヤーは各自席を立って歩き回り、自由に”密談”・”調査”を行うことができるフェイズです。
密談
“密談は、他のプレイヤーと会話することで情報交換する場です。最大3名まで、孤立するプレイヤーが生じないよう心がけましょう。
調査
“調査”は任意のタイミングで調査トークン1個を場に支払い場にある調査カードを獲得するものです。
第一調査フェイズでは、以下の通り各プレイヤーは調査トークンを受け取ります。
キャラクターごとに調査トークンの個数が異なるためご注意ください。
調査トークンはフェイズを跨いで持ち越すことができないため、フェイズ終了までに全て使い切りましょう。
| キャラクター | 調査トークン個数 |
| クイーン | 3 |
| セールス | 3 |
| ベンチャー | 4 |
| アシ | 3 |
| ドク | 3 |
| ナノ | 2 |
| キャリア | 4 |
調査カードの種類
調査カードには”物品カード”と”洞察カード”の2種類あります。
物品カードは、文章面(カード表面)に「物品」と記載があるカードのことで、物的証拠を表すカードです。
物品なので他のプレイヤーとの交換譲渡が可能で、獲得しているかが勝利条件に関わることがあります。
洞察カードは、文章面(カード表面)に「洞察」と記載があるカードのことで、あなただけが気づいた状況や、あなただから理解できた知識を表すカードです。
思考なので交換譲渡ができませんが、密談時の提示や他フェイズでの公開は可能です。勝利条件に関係しません。
調査カード獲得ルール
- 封鎖カードが乗っている山札のカードは調査禁止
- 自分の名前が書かれたカードは調査禁止
- 同じ山札のカードは同じ調査フェイズ内で1枚しか調査不可
(同一フェイズ内で同じ山札から2枚以上獲得するのは禁止)
調査カードに「医学リテラシーX以上があれば追加情報Yを入手する」と書かれている場合があります。
このようなカードを引いた場合、自身の医学リテラシーの数値が指定されたXの数値以上であれば即座に指定されたYの番号の追加情報カードを獲得します。
追加情報カードの獲得にトークンを支払う必要はありません。
医学リテラシーが足りない場合、他のキャラクターに応援を求めることができます。ただし、密談として扱うので協力できるのは3人までです。協力した人が全員で獲得した追加情報カードの内容を確認しましょう。
また、調査カードの中には「レコーダーシートを入手する」と書かれているものがあります。
レコーダーシートの情報は、ただちに全員で共有します。そのため、この調査カードを獲得したプレイヤーは即座に全員を集めレコーダーシートの読み聞かせを行いましょう。
読み聞かせの方法はレコーダーシートをご確認ください。(レコーダーシート読み聞かせの間も調査時間30分の計測は持続します)

第一情報共有フェイズ(10分)
全員で着席し、これまでの調査で獲得した情報を全体共有するフェイズです。
各プレイヤーは自分の所有する調査カードから2枚を選び、公開することになります。
公開する2枚のカードを選んだら、発言順の番号の小さい順に公開するカードを読み上げて全体共有します。(公開したカードの所有権はそのままです。共有物にはなりません。)
第一推理フェイズ(10分)
着席したまま、10分間自由に推理を話し合います。
フェイズ中に自分が所有する調査カードを公開することもできます。(交換譲渡はできません。)
このフェイズでの密談は禁止です。全員が互いに意思疎通できる状態で話し合いましょう。
第二安全確認フェイズ
第一安全確認フェイズと同様、進行役プレイヤーがルールブックのテキストを読み上げた後、フロアマップを確認するフェイズです。
第二調査フェイズ(30分)
第一調査フェイズと同様、プレイヤーは各自席を立って歩き回り、自由に”密談”・”調査”を行うことができるフェイズです。
密談や調査のルール、医学リテラシー、レコーダーシートの扱いなどは第一調査フェイズと相違ありません。
ただし、第二安全確認フェイズを経て、調査可能範囲(部屋)が増えていることにご注意ください。
第二調査フェイズでは、各プレイヤーは以下の通り調査トークンを受け取ります。
| キャラクター | 調査トークン個数 |
| クイーン | 4 |
| セールス | 4 |
| ベンチャー | 3 |
| アシ | 3 |
| ドク | 3 |
| ナノ | 3 |
| キャリア | 4 |
第二情報共有フェイズ(10分)
第一情報共有フェイズ同様、全員で着席し、これまでの調査で獲得した情報を全体共有するフェイズです。
第二推理フェイズ(10分)
第一推理フェイズと同様、10分間自由に推理を話し合います。
推理披露フェイズ(ひとり1分)
一体何が起こっていて、事件の真相はどういうことなのか、、、各自の考えを整理するため3分間思考時間をとり、発言順の番号が小さい順に1分ずつ推理を発表していきます。
この際、質問などはできず、発言中のプレイヤー以外の他プレイヤーの発言も禁止です。
投票フェイズ
全員が推理発表を終えたら、全員が一斉に拘束したいキャラクターを指さします。
マユズミ博士に起こった事態を解き明かし、マユズミ博士本人以外の責任をとるべき人物を拘束します。
投票フェイズの詳細については、クライマックスブックに記載されています。
推理披露フェイズが完了したら、ルールブックの指示に従いクライマックスブックを開き、指示に従って投票を行いましょう。
※クライマックスブックには事件の展開・真相に関わる重要な記載があります。指示があるまで絶対に開かないようご注意ください!
クライマックスフェイズ
物語のエンディングに至る前に、物語の展開・真相に迫るクライマックスフェイズに移ります。
ここでは、キャラクター同士でのさまざまな話し合いと決断を行います。
詳細については、クライマックスブックを基に進めていきましょう。
エンディングフェイズ
クライマックスブックを基に物語の結末を読み、各キャラクターの得点計算を行います。
最も得点が高かった人が勝利!ですが、物語を最も楽しんだ人が優勝です◎
評価と感想
わたしがシナリオプレイ時の条件は、下記の通りです。
評価
科学の世界に没入!異色の高難度ミステリー!!
| 推理難易度 | ロールプレイの楽しさ | 世界観没入度 | 感情揺さぶられ度 |
| ⭐⭐⭐☆☆ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐☆ |
本作が誇る「高難度」とは、単なる推理の複雑さではありません。
最大の壁は、遺伝子・ウイルス・免疫といった近未来の医療技術を扱う圧倒的な“設定情報量”の理解難易度。
科学、とくに生物分野に苦手意識がある人には、設定書の読み込みだけでひと仕事かもしれません。
とはいえ、用語集など補足資料のサポートは充実!これらの内容をしっかり把握できれば、物語への没入度が一気に高まり、ロールプレイ重視の構成も相まって、極めて濃密な体験が味わえます。
特にクライマックスフェイズは、博士失踪事件の核に迫りエンディングに向かって駆け抜ける疾走感に盛り上がります!
科学という異分野の扉を開くことで広がる、他にはないマーダーミステリーの世界。
重厚な設定を楽しみたいあなた、挑戦的な物語に惹かれるあなたにおすすめしたい、まさに“研究者気分”で挑む一作です。
難易度
難易度は『高め』です。
キャラクター設定書はボリューム多めで、先述の通り科学分野にわくわくしない方にとっては読解が苦行になり得ます。
しかし、他のシナリオではなかなか味わうことのできない面白さを持っています。
シナリオの性質により、完全なるマダミス初心者の方よりも、他のシナリオを通過したことのある方におすすめです。
感想
好きな人にはぶっ刺さる!異色のSFマダミスで濃密な没入体験◎
未来医療をテーマにした特殊な世界観が新鮮で、わたしには大ヒットでした!
キャラクターごとに設定された独自パラメーターや、段階的に展開されるフェイズ構成が秀逸で、物語にどんどん引き込まれていく感覚がたまりませんでした☺︎
専門的な用語も多く一見とっつきにくく感じるかもしれませんが、理解できると一気に没入度が跳ね上がります。
終盤では“倫理”や“命の価値”といった現代にも通じるテーマが浮かび上がり、ただの推理ゲームでは終わらない深みが印象的でした。
一風変わった舞台設定で、非日常の濃厚なミステリー体験を求めているあなたはぜひ一度プレイしてみてください!
まとめ
今回はオフライン・GMレスでプレイできるパッケージ型マーダーミステリー『ゲノムの塔』についてレビューしました。
近未来の医療技術をテーマに、特大ボリュームの得意で濃密なシナリオでした!
本サイトでは、本記事のようなマダミスレビューのほか、プレイ人数別おすすめシナリオや人気のパッケージ型シナリオシリーズまとめなど、マダミス情報を発信しています。
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