
情報量、ブラックホール級!?
濃厚な宇宙SFの世界を体験できるマーダーミステリー!!
今回はパッケージ型マーダーミステリー『プラネットイーター』について、レビューします。
本記事では、このシナリオのあらすじ、遊び方、登場キャラクター、ネタバレなしの感想・評価についてご紹介します!現在、本シナリオが気になっているあなたの参考になれば幸いです◎
シナリオ概要
| プレイ人数 | 6人(GM不要) |
| プレイ時間 | 3時間30分+α |
| プレイ環境 | オフライン |
| 対象年齢 | 15歳~ |
| ジャンル | マーダーミステリー |
| 発売時期 | 2023/5/20 |
| サイズ | 27 x 20 x 4 cm |
| 版元 | snailcode |
『プラネットイーター』は、snailcode制作のパッケージ型マーダーミステリーで、宇宙船で起きた殺人事件を解き明かすSF系シナリオです。
オフラインかつGMを立てることなくプレイ可能で、ゲーム参加者全員が宇宙船の乗客になりきり物語を作り上げることができます。
あらすじ

これは、宇宙旅行や惑星移住が当たり前となった未来の物語。
光年を超えるワープ航法やコールドスリープが実用化され、人々は新たな星へと生活圏を広げていました。
そんな中、あなたたち乗客はコールドスリープ中の宇宙船で突如、鳴り響く警報により強制的に目を覚まされます。
集められた先はカフェテリア。船を管理するAI・ジャスティンが語ったのは、想像を絶する一言——、
「船内の格納庫にて、死体が発見されました。」
集まったのは、死んだ男を除いたたった6人。
通信は宇宙警察に通じたものの、到着には時間がかかる。
その間、乗客たちは“容疑者”として、互いに疑いながら真相を追うことになります。
しかも、目覚めたばかりの記憶はまだ混濁しており、頼れるのは不確かな記憶と限られた手がかりのみ。
密室同然の宇宙船内、AIの監視の目をかいくぐって、果たして殺人は可能だったのか?
あるいはこの事件には、まだ誰も知らない「真実」が隠されているのかもしれません。
登場人物紹介
殺人事件に巻き込まれてしまった宇宙船の乗客6名、個性豊かな事件の容疑者たちをご紹介していきましょう。
アリス(30代前半/女性)

- フリージャーナリスト
- 取材の活動拠点をコロニーから地球へ移すために乗船
- 金髪ボブの細身の女性で真面目で高潔な雰囲気
- 世界情勢に詳しく取材の経験豊富
ロバート(40代後半/男性)

- 宇宙生物学者
- 地球で開催される宇宙生物学会に出席するため乗船
- あご髭に茶髪のもじゃ毛でガタイの良い紳士的な男性
- 宇宙生物に関する論文をいくつか執筆している
チャーリー(20代前半/無回答)

- 無職
- 母星である地球へ移住するため乗船
- 茶髪のマッシュルームヘアで中性的な顔立ちの人物(性別不明)
- コロニー生まれコロニー育ちで地球に行ったことがないが新しい仕事は地球で探す予定
ディビッド(30代後半/男性)

- ビジネスワーカー(サラリーマン)
- 地球への旅行のため乗船
- 短髪の黒髪で長身だが少し気弱そうな男性
- 初めての宇宙旅行だったが事件に巻き込まれて苛立っている
エレン(30代前半/女性)

- エネルギー系企業の会社員
- コロニーから地球への転勤のため乗船
- ゆるふわパーマのかかった黒髪セミロングの女性
- いつも笑顔でおっとりしているが人が死亡したことに対して深い悲しみに暮れている
フランク(30代後半/男性)

- 世界連盟の職員
- コロニー出張任期満了による帰任のため乗船
- 金髪天然パーマでお調子者の気さくな性格のため人見知りしないタイプ
- 酒好きで船内ではコロニー産の酒を嗜んでいたが事件を受けてナーバスになっている
遊び方/ルール
- ゲームの準備
- 設定書読み込み(15分)
- 自己紹介(1分×6人)
- 第1調査フェイズ(20分)
- 第1意見表明フェイズ(1分×6人)
- 幕間(5分)
- 第2調査フェイズ(40分)
- 第2意見表明フェイズ(1分×6人)
- 最終全体議論フェイズ(10分)
- 投票フェイズ(5分)
- アクションフェイズ(1分×6人)
- エンディングフェイズ
- エピローグ
本シナリオは、全2回の調査フェイズを経て事件の真相に迫る推理ゲームです。
シナリオの構成としては一般的で、複雑なルールなどないシンプルな作りになっています。
調査フェイズでは、カードの調査を行うだけでなく、全体会議やプレイヤー同士の密談、カードの交換・譲渡・公開(一部のカードを除く)が許可されており、比較的自由なスタイルで推理を楽しめるマダミスです。
上記のフェイズの詳細について、後述にてさらに詳しくご説明します。
ゲームの準備
冊子「はじめにお読みください」を基に、下図のようにカードを配置します。

カード裏面のメインタイトルが同じ調査カードは重ねて置きます。(例:「アリスの個室 荷物」と「アリスの個室 スリープカプセル」は同じカードの山にセットします。)
※セッティングの際に、カードの表面や二つ折りシートの中身、「はじめにお読みください」以外の冊子の中身も見ないようご注意ください。

カードのセッティングが完了したら、冊子「はじめにお読みください」のプロローグを進行役1人が読み上げます。
プロローグ共有後、担当キャラクターの選択を行いましょう。
設定書読み込み(15分)
プレイヤーは全員、担当キャラクターのキャラクター設定書、配られた初期カードを黙読します。
設定書や初期カードの内容は、ゲーム中にいつでも確認できるので暗記する必要はありません。
設定書は各キャラクターの記憶を表すもので、他人の頭の中を覗けないのと同様に他人に設定書の内容を見せたり、密談や議論の際の情報共有時にも設定書の内容をそのまま読み上げるのは控えましょう。
自己紹介(1分×6人)
進行役プレイヤーから時計回りの順に、キャラクター設定書の表紙にある「共通公開情報」を基に、1人1分程度で自己紹介を行います。

第1調査フェイズ(20分)
調査フェイズでは、「全体議論」「カードの調査」「密談」「カードの公開・譲渡・交換」を行うことが可能です。
「カードの調査」は、各プレイヤー5枚ずつ配布された調査トークンの中から、1枚を消費することで場のカードを1枚獲得・閲覧することができます。(調査トークンは他のプレイヤーに譲渡できません。)
「調査カード:特殊」は、調査するのに特別な条件が必要になるカードです。所定の条件を満たしたとき、閲覧できるようになります。
また、証拠隠滅を避けるため、自分が担当するキャラクターの個室は調査不可、同一フェイズ内に同じカードの山を2回以上調査することは不可となっています。

第1意見表明フェイズ(1分×6人)
各プレイヤーは1人ずつ順に自分の考えを発表します。
発表する内容について制限はありませんが、以下のような内容について発表すると良いでしょう。
- 犯人は誰か(その理由)
- 自分が欲している情報や気になる情報
- 今後の自分の方針
このフェイズ中にカードの公開・譲渡・交換はできません。
誰かが発表している最中に、他のプレイヤーが発言することはできません。(反論・質問など不可)
幕間(5分)
冊子「シナリオブック」を基に、物語が進展します。
第2調査フェイズ(40分)
第1調査フェイズと同様に、調査フェイズを開始します。
※フェイズ開始時、調査トークンは1人6個ずつ配布してください。(第1調査フェイズと個数が違うため要注意!)

第2意見表明フェイズ(1分×6人)
第1意見表明フェイズと同様、各プレイヤーは1人ずつ順番に自分の考えを発表します。
最終全体議論フェイズ(10分)
これまでの調査フェイズや意見表明フェイズを基に、全員で議論を行います。このフェイズが議論できる最後の場です。
このフェイズでは「調査」「密談」はNGです。ただし、カードの公開・譲渡・交換は可能となっています。
投票フェイズ(5分)
投票により拘束されるプレイヤーを決定します。
進行役プレイヤーの合図で、すべてのプレイヤーは一斉に拘束したいプレイヤーを指名します。
誰も拘束すべきでないと考える場合は天井を指します。ただし、自分自身への投票はできません。
投票数が単独最多の人物が拘束され、「誰も拘束すべきでない」が単独最多となった場合は誰も拘束されません。
もし最多の人物が複数いた場合、最多票を得た人物だけを対象に決選投票を1回だけ行います。
決選投票で最多票の人物が複数いた場合は膠着状態となり誰も拘束されません。
アクションフェイズ(1分×6人)
各プレイヤーはキャラクター設定書に記された「アクションフェイズでできる行動」を行うことができます。
ただし、先の投票フェイズにて拘束されたプレイヤーはアクションを行うことができません。
キャラクターには、複数の行動の選択肢が与えられている場合がありますが、アクションを実行できるのは1度のみです。複数の選択から実行したいアクション1つを選び行いましょう。何も行動したくない場合は何もしないことも可能です。
進行役プレイヤーが「行動順1」から順に、「行動順10」までカウントアップしていきます。
該当する行動順が回ってきたプレイヤーは名乗り、行動の名称とアクションの対象、内容について読み上げ、処理を行ってください。
行動順のカウントアップ時、行動を促しに対して誰も反応がなかった場合、その行動順の行動はないものとして次へ進みます。
エンディングフェイズ
冊子「エンディングブック」を開き、投票結果やアクション結果に応じてエンディングを読み上げ、得点計算を行います。
最も高い得点を獲得した人が勝利!ですが、物語を楽しんだ人が優勝です◎
エピローグ
本シナリオではエンディングの他、各キャラクターの事件後が描かれた「エピローグ」シートと、推理の導線や解説が記載された冊子「事件の全容」があります。エンディングフェイズ終了後に読みましょう。
各キャラクター名が書かれた「エピローグ」シートは、XとYの2枚とも配布して各自2枚とも内容を確認します。
各シートを開いて一番上に条件が記載されているので、該当する項目を読み上げて共有しましょう。
各項目にはキャラクターの”幸福度”がA・B・Cで表されています。Aが最も幸福、次いでB、Cと続きます。
ゲームの評価とは異なる軸でのスコアですが、プレイヤー間で競うものではなく、物語のスパイスのような、ひとつの要素として楽しめるものとなっています。

評価と感想
わたしが本作をプレイしたときの条件は、下記の通りです。
評価
情報量ブラックホール級!?初心者・経験者問わずおすすめのマダミス!!
| 推理難易度 | ロールプレイの楽しさ | 世界観没入度 | 感情揺さぶられ度 |
| ⭐⭐⭐⭐☆ | ⭐⭐⭐⭐☆ | ⭐⭐⭐⭐☆ | ⭐⭐⭐☆☆ |
本作は、シナリオ構成もルールもシンプルでありながら、しっかりと物語に引き込んでくれるシナリオです。
ルールブックや各種冊子の構成も丁寧で、初心者でも安心してプレイに集中できるよう配慮されています。
もちろん経験者にとっても推理のしがいがある重厚な内容で、完成度の高い作品です。
特に魅力的だったのは、共通のエンディングに加えて、キャラクターごとのエピローグが用意されているという点。
プレイヤーの選択が、そのキャラクターの「その後」にしっかりと反映されていて、自分が紡いだ物語が最後まで生きていると実感できるのが嬉しいポイントです。
また、事件の全体像をきちんと整理し、真相に至るまでの道筋を丁寧に記述した「事件の全容」冊子の存在もよかったです◎
推理が外れてしまっても、なぜそうなったのかを納得して終われるため、モヤモヤが残らずスッキリとした読後感ならぬ「終幕感」を味わうことができます。
一方で、キャラクター設定や調査カードなどの情報量はかなり多め。
情報をしっかりと整理し、限られた時間で効率よく議論を進める力が求められるため、油断していると真相にはなかなか辿り着けません。
しかしそれこそが本作の醍醐味!
濃厚な情報の渦に巻き込まれながら推理するその過程こそが、深い没入感と達成感を与えてくれます。
「情報の海に沈んでも構わない」という推理好きのドM(?)なあなたに、ぜひとも体験してほしい珠玉のマーダーミステリーです。
難易度
難易度は『普通~やや難しめ』です。
キャラクター設定書のボリュームはやや多めですが、テキストが読みにくいという印象はなく、文章量が多い割にすんなり頭にストーリーが入ってきました。
ルール・シナリオ構成ともに一般的なマダミスと同様の作りで、ゲームシステム上の難しい部分はないので初心者でも難なく楽しめる作品だと思います!
感想
「自分たちで物語を作っている感」がGOOD◎
このマーダーミステリー、物語の結末が1つではなく、プレイヤーの選択によって分岐していく「マルチエンディング」形式であることに加え、各キャラクターごとのエピローグが用意されているという点が素敵でした。
どのように動くか、どんな判断をするか、それらすべてが物語の方向性を決定づけていくのが体感でき、「わたしたちで物語を紡いでいる」という感覚がとても強く感じられました。
シナリオ全体を通して、キャラクターによって立ち回りの難易度にバラつきのある印象を受けましたが、それ以上に重要なのはプレイヤーそれぞれの考え方や行動選択、そして全員で作り上げた一体感。
個人的には、そのプロセスが楽しく、満足度の高いミステリー体験になりました。
また、地味に感動したポイントとしては、プレイ時間の表記が「余裕を持った設計」になっていると感じられたこと。
多くのマダミスはプレイ後の感想戦で時間が延びがちですが、この作品は公式の想定時間内でしっかり収まったのが嬉しかったです(参加者が全員マダミス慣れしていたという要因もあるかもしれませんが)。
物語の終幕がしっかりと描かれていること、そしてその結末が自分たちの手によって形作られていくという構造は、何度でも思い出したくなるような濃密な時間でした。
まとめ
今回はGMなし・オフラインでプレイするパッケージ型マーダーミステリー『プラネットイーター』についてレビューしました。
宇宙SF系のシナリオで、初心者にも経験者にもおすすめしたい満足度の高いマダミスでした◎
当ブログでは、マダミスを中心にアナログゲームを多数ご紹介しています。
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